NITEP談話会

教室談話会/第30回NITEP談話会

Asia/Tokyo
中百舌鳥キャンパス

中百舌鳥キャンパス

Description

題目:「 単一サイクル 6 fs光強電場が拓く強相関アト秒電子ダイナミクス」
講師:岩井伸一郎教授(東北大学)
日時:2月7日(火)5限目(16:45〜18:15)

場所:大阪公立大学中百舌鳥キャンパス,サイエンスホール

概要:
近年の超短パルスレーザー技術の発展は, 電子温度の上昇に隠されていた物質の光励起の「内側」をもあらわにしつつある. わずか数フェムト秒(1フェムト秒=千兆分の1秒 )に集中した~V/Åにも及ぶ瞬時電場振幅は,「ペタ(千兆)ヘルツ」というとてつもない高周波数で駆動される新たな光エレクトロニクスを創成しつつある. こうした研究は, 主にバンド絶縁体やグラフェン, ナノ金属などで進められているが, 電子の多体効果が顕著な強相関電子系では, 一電子描像を超えた光強電場効果も予想される. 電子間クーロン反発のエネルギーが数eV(h/(1 フェムト秒):hはプランク定数)であることを考えれば, こうした極短時間のアプローチが, 相関電子の本質に迫り, その潜在能力を活かすための突破口になる可能性も期待できる. 一般に, 光パルスの照射は瞬時に物質の電子温度を上昇させ, 強相関物質の特徴的な秩序状態を熱的に壊してしまう. 仮に電子温度が上昇する前に光電場の印加を完了できたら何が見えてくるのだろう? 本講演では、有機(超)伝導体における非線形光放出 [1-4]、量子スピン液体の光磁気効果[5]のほか、銅酸化物高温超伝導体、強相関ディラック半金属や、電子強誘電体を舞台とする、超短時間の“無散乱タイムウインドウ”における電子ダイナミクスついて議論したい。
[1] Y. Ishikawa et al., Nat Commun. 5, 5528(2014). 
[2] Y. Kawakami, et al., Nat. Photon. 12, 474(2018).
[3] Y. Kawakami, et al., Nat. Commun. 11, 4138(2020).
[4] S. Iwai et al., Faraday Discussion 237, 353(2022).
[5] T. Amano et al., Phys. Rev. Res. 4, L032032(2022).