第5回関西核多体セミナーのお知らせ
- 日時 2024年5月17日(金) 15:30-
- 場所 大阪公立大学文化交流センター・ホール
〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目2−2−600 大阪駅前第2ビル6階 - 講演者 富樫 甫 (阪大RCNP)
- 題目 高密度天体現象における原子核物理の不定性
- 概要 核物質の状態方程式は、原子核の大局的な性質を支配するとともに、重力崩壊型超新星爆発や中性子星などの高密度天体の研究においても重要な役割を担う。ただし、そのような高密度天体現象の中心部では、通常の原子核密度の数倍以上にも及ぶ極限状態の核物質が実現されているため、原子核の地上実験からその状態方程式を決定することは難しい。そのため、原子核・ハドロン物理に基づく様々な理論計算によって、これまで多岐にわたる状態方程式が提案されてきた。本セミナーでは、近年の核物質状態方程式に対する研究の進展と、未だに残る状態方程式の不定性について紹介する。特に、「3体核力」と「核子有効質量」の不定性が状態方程式に与える影響を系統的に評価した最近の結果を報告する。さらに、重力崩壊型超新星爆発などの数値シミュレーションでは、高密度物質状態方程式に加えて、ニュートリノが関連する弱い相互作用の反応率も原子核物理に基づいて提供されるべき重要なインプットデータの一つである。本講演の後半では、超新星爆発計算におけるニュートリノ反応率の現状と今後の展望についても言及したい。
「関西核多体セミナー」とは
原子の内部に小さく存在する原子核は、陽子や中性子と総称される核子からなる多体系である。この核子の多体系である原子核の構造を明らかにすることが、核子多体の物理学である。核子多体の物理学は、それ自体が量子力学的な重要性を持つと同時に、「我々の身の回りに存在する元素が、宇宙のどのような環境において作られたのか」と言った根源的な問題とも密接に関連している。核子多体系である原子核は、最近ではがん治療などの応用面でも注目を集めている。
本「関西核多体セミナー」は、大阪公立大、京都大、大阪大などの関西地区の大学において第一線で活躍する当該分野の理論の研究者が中心となり、企画するものである。毎回セミナー形式で研究成果の発表を行い、その後、十分な時間を自由な意見交換にあて、インフォーマルな議論を活発に行うことで、当該研究分野の活性化と将来の展望を切り拓くことを目的とするものである。
具体的に議論すべき物理学の内容としては、現在稼働中の理化学研究所・RIBFや大阪大RCNPなどの国内の加速器実験施設や国外の実験施設から提供される、不安定核・超重核・高励起状態・高スピン状態などのエキゾチックな原子核に関する数多く問題に対して、理論面からいかに迫っていくべきか、などが挙げられる。