NITEP Lecture Series

NITEP Lecture Series 第4回

Asia/Tokyo
Description

Speaker: 緒方 一介 氏(RCNP)
Title: 原子核反応論入門
日時:2019年6月6日(木) 16:00-19:50, 6月12日(水)16:00-19:50
場所:大阪市立大学文化交流センター 大セミナー室

Abstract: この講義では、量子多体系である原子核の反応現象を記述する理論 「原子核反応論」の基礎を紹介する。描述のポイントは、一般に 複雑極まりない原子核反応を、いかに「適切に」簡略化するかで ある。講義の冒頭では、反応研究の神髄とも言えるこの「模型空間 の設定」について述べる。
続いて、反応研究の根幹をなす量子力学的散乱理論の基礎を解説 する。特に、動的な散乱現象を描く際、なぜ時間に依存しない定常 散乱波を用いることが許されるのかに力点を置く。
その後、設定した模型空間に対応する原子核系の一体相互作用を、 核力(究極的にはQCD)に基づいて求めるアプローチ「微視的有効 反応理論」を紹介し、いくつかの研究成果を示す。さらにその 発展形として、緩く束縛した原子核が入射する場合へと理論の 枠組みを拡張する。
一般に弱束縛原子核の反応においては、原子核の分解が本質的に 重要であることが知られている。しかしこの自由度を明示的に 取り入れると、3体系の反応を取り扱う必要性が生じ、リップマン- シュウインガー方程式は有効性を失う。講義の後半では、この 3体反応の問題と、これに対する回答としてのファデーエフ理論 を概観した後、模型空間における3体反応理論として提案された 連続状態離散化チャネル結合法(CDCC)について解説する。
CDCCは、天然に存在しない不安定核の反応現象を分析する際、 最も正確で、かつ最も汎用性の高い模型として広く採用されて いる。また、宇宙で起きている元素合成反応を地上で再現する 研究や、核廃棄物処理の研究でもCDCCは活躍している。講義の 最後では、それらの最先端の研究成果を紹介することにしたい。

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